研究班ご紹介

血管炎は全身性血管炎とも呼ばれ、原因不明で、まだ治療法が確立していない病気です。血管炎は比較的稀な疾患で、患者数も少なく、医療に係る方々や一般の方々にまだよく知られていません。厚生労働省難治性疾患政策研究事業難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班(難治性血管炎班)は、血管炎に対する難病対策の向上および難病支援体制の充実を目指して活動しています。

本研究班は中・小型血管炎臨床分科会、大型血管炎臨床分科会、臨床病理分科会、領域横断分科会、国際臨床研究分科会で構成されています。中・小型血管炎臨床分科会、大型血管炎臨床分科会は、主として診療ガイドライン、診断基準、重症度分類、疫学研究などを担当します。臨床病理分科会は病理診断に関する支援と研究を、領域横断分科会は患者様・ご家族への情報提供、若手研究者の教育、関連学会との連携を、国際臨床研究分科会は海外の学会や血管炎研究グループとの連携、国際的研究への参加、などを担当します。

令和5年度:難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班の構成

構成図

各分科会の活動内容

大型血管炎臨床分科会

大型血管炎臨床分科会では、大型血管炎を構成する高安動脈炎と巨細胞性動脈炎の2疾患と末梢血管病変の狭窄を来すバージャー病の3つの指定難病を主な対象疾患として、調査研究を進めてます。本分科会はこれらの疾患の診療ガイドライン、診断基準、重症度分類の改訂(策定)を主な業務とします。さらに、これらの疾患の現状を分析するための高安動脈炎と巨細胞性動脈炎の特徴や治療反応性などを明らかにする目的で、調査研究班の参加全施設による独自の前向き、後ろ向きの疫学登録研究を進めています。また、高安動脈炎は小児期での発症も見られるため、2017年度から小児科の血管炎専門家の先生方に参加頂き、小児高安動脈炎の調査研究も進めています。2021年から高安動脈炎と巨細胞性動脈炎での心臓血管手術の現状を明らかにするため、これら2疾患の手術症例登録研究も進めています。さらに2023年度から、AMED難治性疾患実用化研究事業の「診療に直結するエビデンス創出研究分野」で採択された「高安動脈炎における血管合併症バイオマーカーの開発に向けたエビデンス創出研究」研究班(研究代表者:中岡良和)と厚生労働科研班・田村班との間で緊密な連携のもとで研究活動を開始しています。このような研究活動を通じて、大型血管炎臨床分科会は高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、バージャー病の患者さん達のQuality of Lifeをより良くして、診断と治療の向上、開発に貢献して参ります。

分科会長 中岡 良和


中・小型血管炎臨床分科会

本分科会では、難治性血管炎調査研究班で扱う指定難病のうち、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA;旧称 ウェゲナー肉芽腫症)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA;別称 チャーグ・ストラウス症候群)の抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎3疾患と中型血管炎に属する結節性多発動脈炎(PAN)、悪性関節リウマチ (MRA) の併せて5疾患、さらに、小児期に発症する代表的な血管炎である川崎病を対象とし、疾患に関する知識の普及・啓発と医療水準の向上を目指したさまざまな活動を行っています。2023年4月には、ANCA関連血管炎診療の進歩の啓蒙と地域ならびに医療機関の診療ギャップを埋めるためにANCA関連血管炎診療ガイドライン2023を策定いたしました。また新たに開発された新たな治療法の有効性・安全性の検証とさらなる治療法の開発を目指した取り組みを行っています。そのためにそれぞれの疾患における前向きおよび後ろ向きコホートを構築し臨床研究を進めるとともに、指定難病申請に提出される臨床調査個人票を用いた診療実態調査研究も行い我が国の血管炎診療におけるニーズを常に検証しています。

本分科会は、これらの患者さんの健康に資する調査・研究活動を通じて、診療レベルの向上と良質な医療体制作りに取り組んで参ります。

分科会長 土橋 浩章


臨床病理分科会

本分科会は、実地臨床医ならびに実地病理医の血管炎診療の質を高めることを目的とし、以下の二つのことに取り組んでいます。一つめは、血管炎病理診断コンサルテーションシステムの運用です。血管炎の診断に病理医が果たす役割は大きいものの、希少疾患であるが故に多くの実地病理医にとって血管炎の診断は必ずしも容易ではありません。そこで、血管病理を専門とする本分科会の構成員が中心となってコンサルタントチームを形成し、全国の施設で血管炎の診断に迷う病理標本に対する専門家の意見を無償で提供しています。コンサルテーションをご希望の場合は、右列の「血管炎病理診断コンサルテーション」バナーをクリックしてください。申し込みの方法(マニュアル)や書式をダウンロードできます。二つめは、血管炎病理診断のために有用な染色法等の開発と普及・均てん化です。血管壁の破壊の様子を描出する特殊染色法や、血管炎の診断の参考となる各種免疫組織化学・免疫蛍光染色法等の開発、それらのプロトコルの標準化、普及に向けた取り組みを行っています。

分科会長 石津 明洋


領域横断分科会

われわれの領域横断分科会は、他の分科会やさらには幅広く血管炎診療・研究に携わる医師や患者会と連携しながら活動することを特徴としています。活動の内容として、他の分科会で作成された診療ガイドラインを普及させるため、臨床系の各学会で共同シンポジウムを開催し情報交換を行うとともに、血管炎班のホームページ(HP)をより適切なものにする作業を行っています。その理由として、本班会議のHPにはきわめて有益な情報が含まれているにもかかわらず閲覧数が伸びていない現状があります。一方、診療ガイドラインは常に改訂を継続していく必要があります。領域横断分科会では、血管炎診療に携わっている医師にアンケート調査を行うことでevidence-practice gapを明確とし、今後のガイドライン作成に寄与できるよう努力しています。実際、今までの難治性血管炎班においてもMPA/GPAや大血管炎に関して診療の現状に関するアンケートを行い、班会議や論文などで公表してきました。本年度はEGPAに関する調査を予定しています。また血管炎は、患者側からすると疾患概念や治療法がわかりにくいと思われます。したがって基本的な考え方や班の業績を丁寧に解説することも患者さんのQOLを高めるためには重要です。患者会とも密に連携して最新情報が手軽に共有できる工夫を行いたいと考えています。

分科会長 藤井 隆夫


国際臨床研究分科会

国際臨床研究分科会は、今年度の新研究班より横断領域分科会より独立し、我が国の血管炎研究における国際的な部門を中心に活動していくこととなりました。本分科会は、欧米の血管炎会議等へ定期的に参加して最新の国際臨床研究情報を収集し広く班員に共有すること、これまで行ってきた血管炎に関する国際臨床研究の継続するとともに新規国際的臨床研究プロジェクトへの参加を検討し積極的な支援を行うこと、血管炎に関する国際学会あるいは国際研究会議において本研究班との合同シンポジウムなどを企画・実現していくこと、また本研究班における診療ガイドライン策定の際に国際的な診療ガイドラインの情報を提供することによりその策定を補助すること、などを中心に行っていきます。そのほか、他の分科会・あるいは他の研究班と合同でこのような活動をしていくことにより、日本における血管炎に対する適切な医療の確立に貢献し、患者さんに提供できるように努力していきます。

分科会長 駒形 嘉紀


顧問(五十音順)

  • 安倍 達(埼玉医科大学総合医療センター 名誉所長 )
  • 有村 義宏(杏林大学医学部腎臓・リウマチ膠原病内科 客員教授, 医療法人社団 吉祥寺あさひ病院 病院長)
  • 鈴木 和男(千葉大学 災害治療学研究所 客員教授)
  • 髙崎 芳成(順天堂大学医学部膠原病内科学講座 名誉教授)
  • 橋本 博史(順天堂大学医学部膠原病内科学講座 名誉教授)
  • 針谷 正祥(東京女子医科大学医学部内科学講座膠原病リウマチ内科学分野 教授)
  • 槇野 博史(香川県立病院課 病院事業管理者)
  • 吉木 敬(北海道大学医学部 名誉教授)

厚生省・厚生労働省 難治性血管炎に関する調査研究班の変遷

変遷図
血管炎各疾患の解説
医療従事者向け 一般向け
ウェブ版血管炎病理アトラス 診療ガイドラインのクイックリファレンス 血管炎病理診断コンサルテーション
小児発症高安動脈炎の
子どもと親のための
ガイドブック
関連機関・リンク
難病情報センター 厚生労働省 難病対策