よくある質問

「子どもに影響がないのか?遺伝しないのか?」「妊娠中の注意事項は?」など、妊娠中に血管炎で治療されている方の疑問にお答えします。

病気について

免疫複合体性小型血管炎とは細い動脈と静脈(細動脈、細静脈)と毛細血管に起こる小型血管炎の総称で、下記のような病気が含まれています。

  • クリオグロブリン血症性血管炎
  • IgA血管炎(別名:シェーンライン・ヘノッホ紫斑病)
  • 低補体血症性蕁麻疹様血管炎(抗C1q血管炎)
  • 抗GBM病(グッドパスチャー症候群、抗GBM抗体型腎炎)

ANCAとは、英語のAnti-Neutrophil Cytoplasmic Antibody(抗好中球細胞質抗体)の略語で、自分の血液のなかにいる白血球(とくに好中球)に結合する抗体のことです。通常は、ばい菌などを攻撃する好中球ですが、ANCAが自分の血管を攻撃することで起こる血管炎のことをANCA関連血管炎と言い、下記のような病気が含まれています。

  • 顕微鏡的多発血管炎(略称:MPA)
  • 多発血管炎性肉芽腫症(略称:GPA)旧称:ウェゲナー肉芽腫症
  • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(略称:EGPA)旧称:チャーグ・ストラウス症候群

顕微鏡的多発血管炎は60から70歳台、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は50〜60歳台の発症が多いと言われています。高安動脈炎は若い女性に比較的多い病気ですが、中・高年で発症する場合もあります。巨細胞性動脈炎は通常50歳以上の年代で発症する病気です。

血管炎が遺伝性であるかどうかについては、まだ解明されていません。

免疫の不具合が関わって起こると考えられていますが、はっきりとした原因は分かっていません。

診療施設について

血管炎は身体症状と血液検査などから総合的に診断する必要がありますので、まずはかかりつけ医に相談してください。症状によっては他の疾患の可能性もありますので、紹介医療機関で再度受診・検査をする必要があります。

血管炎の場合、妊娠中の合併症を生じやすいのでお近くの高次医療機関(総合周産期センター、地域周産期センターなど)での管理をすすめます。ただし、病気の状態が落ち着いていて、産婦人科と関連各科が密に連絡が取れている場合は、この限りではありません。

治療について

まず病気を落ち着かせるための寛解導入療法を、ステロイド薬を中心とした投薬によって行います。寛解となったら落ち着いた状態を保って再燃を防ぐための寛解維持療法を、ステロイド薬などの投薬量を抑えながら行っていきます。

血管炎の治療に使われる薬にはステロイド薬を中心に、免疫抑制薬、ガンマ・グロブリン、生物製剤などがあり、患者さんの症状によって使い分けます。

血管炎の患者さんには主治医の判断に基づいて、適切な薬が処方されています。ずっと同じ薬を、同じ量使い続けていくかは患者さん個人の症状にもよります。特にステロイド薬は、副作用が怖いからと自己判断で服薬を中止することで、病気が再燃したり、ステロイド離脱症候群(だるさ、低血糖、発熱、血圧低下など)が起こることがあります。必ず、医師に相談してください。

出産との関連について

血管炎に使われる薬には、もともと下記のような副作用があります。
妊娠中の血管炎治療には適切な量を処方していきますが、妊娠前に妊娠中の禁忌となる薬を別の薬に切り替える必要もあるため、妊娠の希望がある場合は主治医へ相談してください。

  • ステロイド薬
    感染症、大腿骨頭壊死、骨粗鬆症、糖尿病、胃潰瘍、肥満、精神症状など
  • 免疫抑制薬(シクロホスファミド)
    感染症、発がん性、白血球減少など
  • ガンマ・グロブリン
    肝障害、発熱、肺水腫など
  • 生物製剤(リツキシマブ)
    感染症、肝炎、発がん性など

血管炎の患者さんの出産は、通常の分娩管理で良いと考えられています。症状によっては帝王切開となる場合もありますので、主治医や産科医と相談してください。

母乳中の薬剤の移行性と安全性に関してはまだ十分な情報はありませんが、赤ちゃんへの悪影響は少ないとされています。ただ、薬の種類によっては授乳できないものや、赤ちゃんが下痢を起こすなどの身体症状が出るものもあるため、まずは主治医に相談してください。

生活について

下記を心がけてください。

  • 規則正しい生活で、睡眠時間をしっかり取りましょう。
  • 過労を避けて、寝不足なども避けましょう。
  • 風邪やその他の病気にかからないよう、感染症の予防をしっかりしてください。
  • 寒さで血管が収縮して負担のかかりやすい冬は、暖かくして過ごしましょう。
  • 精神的にリラックスすることを心がけ、適度な運動をして体力をつけましょう。
  • 薬は忘れずに、きちんと処方された量を飲みましょう。

激しい運動は避けましょう。ウォーキングなど、翌日に疲れを残さない程度の運動強度を目安に行ってください。

このページのコンテンツの一部は、難治性血管炎に関する調査研究班ホームページの許可を受けて掲載しています。

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